指導歯科医師について

厚生労働省歯科医師臨床研修指導医

プログラム責任者 久保倉 弘孝
  • 神奈川歯科大学卒業
  • 横浜市立大学口腔外科学教室入局
  • 横浜船員保険病院医長代理
  • 小机歯科医院開設
  • 医療法人社団敬友会 理事長

研修医の方にひとこと 私が歩んできた道

受けてきたセミナーの羅列はしないで、どの様なセミナーが後の臨床に影響を与えたかを書きました。

根管治療のこと

私が、歯科医師になってから一番困ったのが根管治療でした。打診痛の解消はいつまで経っても無くならない。だから根管充填はずっとできないし、根管貼薬をしているうちに、更に細菌が増殖するのか、排膿までしてくる始末。それでは薬剤で制御しようと思って、色々な薬剤を試しても、一時的には良くなるものの根管充填をすれば再発。この様な繰り返しでした。挙句の果てには、抜歯を宣告しなければならなかったり、余りにも治療に期間がかかるので、患者さんが消滅(他の歯科医院に行ったのでしょう)したりしてホッとしていた自分がいました。

心の底では、あのような側方加圧根充で用いる固形のガッタパーチャを沢山、根管んの中に詰め込んでも、細菌の大きさからすれば隙間だらけなのに、どうして学問的に良いのだろうかと思っていました。

そしてこのモヤモヤを解決するために、色々なエンドのセミナーに行きました。しかし、メーカーがファイルを売りつけるためのセミナーばかりでした。ただ、ある時に垂直加圧根充のセミナーを受講したのがターニングポイントになりました。F先生のセミナーです。

それから、側方加圧根充をやめて、垂直加圧根充法に切り替えました。すると、劇的に治る事に気が付きました。そしてある程度の打診痛があっても、しっかり垂直根充をすると、打診痛も消えることも分かりました。

ただし、この垂直加圧根充はHファイルを多用するので非常に非効率でした。保険診療でまともに使えるようなテクニックではありませんでした。

そして更にH先生のセミナーを受けました。F先生の方法よりは効率的なのですが、根管内で、ロングダイアモンドバー(タービン用)を用いるために、穿孔等の事故が起きやすい事と、根管内を削りすぎてしまうことが最大の難点でした。ただ、根充法はF先生の方法を用いました。これにより、効率化が図られても予後が良い方法にたどり着くことができました。

しかし、移転をして医院規模が大きくなり、若い歯科医師が入ってくる様になってからは、危なくて、この方法を教えるわけには行きませんでした。上記に様に危険すぎるからでした。

そして、米国式根管治療の方が良いのかと思い、アメリカのUSC(南カルフォルニア大学)で行われたS先生のCWCT法セミナーをうけました。

それからは、システムBという装置を使ったCWCT法に切り替えた時期がありました。しかし!肝心の根充方法が完全ではない事に気が付きました。やはり日本で習った、垂直加圧根充の方が治療成績は上でした。

そこで、根管形成はCWCT法の規格化された方法にして、根管充填は日本の方法を用いる、組み合わせの方法を開発しました。さらに、根管内を削りすぎないために、根管形成達成基準を数値化して明確化しました。これらにより、当初悩んで根充前には打診痛の解消という曖昧な基準がなくなり、1回または、数回での根管治療を終えることができるようになりました。

よって、敬友会の歯科医院では、側方加圧根充法は全勤務医がやっていません。すべて上記のケースルクト法で行っています。ですから、根管充填の確認のレントゲンは、画像が現れるまで、心臓が高鳴ります。根尖までガッタパーチャが入っていない場合はやり直しだからです。

将来的に、歯科医師として根管治療で悩むか悩まないか?これは大きな違いです。

敬友会の歯科医院には、全国から根管治療の患者さんが来院されています。これはホントです。

なお、症例集は小机歯科のHPをご覧ください

矯正治療について

まずは、MTMという、簡単な矯正から飛びつきました。正中離開や、臼歯部のアップライトからです。いろいろな本を買い込んで、その知識だけで行いました。しかし、実際にやってみると、正中離開は後戻りはするし、臼歯部のアップライトをしても、固定源であるはずの小臼歯が外側に動いてしまったりとかなり苦労しました。それは、本の写真は静止画なので、ワイヤーにどのようなベンドが入ってるのか、トルクがどう入っているのかが分からないからでした。今考えると、MTMは究極的に難しい矯正なのです。

そして、それからフルマウスの矯正治療のセミナーに2年間程度通いました。これは、A先生が六本木で主催していた、ストレートアーチワイヤーテクニックのセミナーでした。しかし、治療途中に印象を採って模型を見ると、上下、それぞれのアーチは綺麗に並ぶのですが、上下が咬みあわないのです。そこで、今度はマルチループエッジワイズテクニック(MEAW)という、レクトワイヤーに個々の歯に対応したループを曲げるE先生の矯正のセミナーに通算4年くらい通いました。

このMEAWによる矯正で、ストレートアーチワイヤーテクニックでは咬みあわせの仕上げが難しかった症例を一気に終わらすことができるようになりました。

しかし、このMEAWの矯正は、かなり小臼歯を抜く場合が多かったのです。小臼歯を抜歯すると、抜歯空隙の閉鎖に困ったり、後戻りで空隙が空いたりと、かなり問題があることが分かりました。特にアングルのⅡ級の場合、上顎の小臼歯を抜くと非常に難儀する事が多く、矯正期間が長くなる場合が多かったのです。

そして、次は、MEAWの発展型であるS先生のGEAWという矯正法のセミナーに出会い、現在でもこの方法を続けています。このGEAWは小臼歯の非抜歯で矯正治療が済む場合が多く、特に顎位の変化を生じさせる事やバイトのアップが容易にできるので、究極の矯正方法と言えます。実際に、私の娘も30歳を超えてからこの矯正方法でⅡ級1類を治してましたが、非抜歯で綺麗に治りました。

現在ではこのGEAW法の第一人者である岡山のS先生に年間6回程度、小机歯科までいらっしゃって頂いて、実際の患者さんに対して矯正治療を教わるセミナーを独自に行っております。

インプラントについて

インプラントは大学卒業後翌年に横浜市立大学口腔外科に在籍している段階で参加させていただきました。大阪歯科大学で3日かけたコースで、日本のインプラントの草分けのK先生に教わりました。ただ、この頃のインプラントは、現在のチタン製のインプラントではなく、京セラが発売を開始した人工サファイアでした。このインプラントは単独で埋立はできなく、臨在歯を削って連結固定しました。そもそも人工サファイアは骨に結合しなかった事と、歯根膜のある天然歯と、歯根膜のないインプラントを連結する事はお互いに影響が多く、多くのインプラントは脱落してしまいました。

この最初のインプラントのトラウマから10年程度インプラントはやりませんでした。ただ、義歯の限界を感じていたのとチタン製インプラントは単独埋立ができる事を聞きました。そして始めたのがAQBインプラントという日本製のインプラントでした。ワンピースのインプラントなので、簡単かと思い飛びついたのですが、このワンピースインプラントは究極的に難しいものですした。

よって、ワンピースインプラントに別れを告げて、当時発売したての京セラのツーピースインプラントのI先生のセミナーに行き、本格的に再度取り組むことになりました。

そして、インプラントの技術を得るために、海外のセミナーにもかなり行きました。多くはアメリカで、7つの大学に行ったと記憶しています。その中でニューヨーク大学では軟組織が付着するというバイオホライズンのレーザーロックというインプラントの話をT先生から聞きました。そして、日本にも輸入が始まっていたので、京セラからこのレーザーロックインプラントに切り替えて現在に至ります。

なお、ICOI(国際インプラント学会)の指導医を持っていますが、この様な資格は取得するのが大変ですが、本当に必要かといえばそうでもないです。

この海外のセミナーでGBRやサイナスリフトの技術を学べたこともありますが、多くの日本人歯科医師と出会うことができたのも財産になりました。

補綴治療について

35年前は今と違って、義歯のオンパレードの時代でした。欠損があれば、印象を採って義歯を作るのですが、うまくいかない事の連続でした。総義歯などは、踊ってばかりで、なかなか咬めるような義歯を作ることが困難でした。

そんな中、日本歯科大学新潟校の補綴科の教授のK先生が主催していた日本臨床補綴学会の長期セミナーに2年ほど参加さえていただきました。ここで補綴の基礎を学びなおさせてもらいました。

ここで学んだ事で後の臨床に大きく影響を与えたのは、義歯は”こう歯”の形態から治す必要があり、金属床の義歯を、技術の高い歯科技工士に作ってもらう必要があるという事でした。レジン床の様な重合をしてそのまま掘り出して研磨をした様な義歯では歪みと変形が大きいのです。このセミナーの講師であった、歯科技工士のAさんに義歯を依頼するようになってからは、義歯とはこうあるものだと思いました。今でも、金属床義歯はAさんに依頼しています。

そして、インレーやクラウンに関しては鋳造をしたゴールドが一番だと10年前までは思っていました。しかし、セレックシステムを導入して実際に使ってみると、鋳造をしている時代ではないとと気が付きました。適合もバイトもセレックで作ったほうが良い場合が多かったからです。そして、特筆するのは、毎年ソフトウエアのバージョンアップの度に、適合度や形態が改善されているのです。

日本の歯科大学では、40年前と同じロストワックスによる鋳造によりクラウンやインレーを作っていますが、時代遅れだと思わざるを得ないのです。

歯周治療について

学生時代、歯周病はなんだか良くわからないと思っていました。卒後は口腔外科に努めたので、あまりペリオの事には触れないですんでいました。そして、開業後も歯石をとる事はやっていましたが、判断基準は非常に曖昧でした。

それを変えてくれたのが、スゥエーデンのイエテボリ大学に留学されていたH先生の連続6回程度のセミナーを受けてからでした。いろいろな文献の紹介や実技がありましたが、結局は歯周病の原因は歯石やプラークであり、それが異物として体に作用する。そして体の反応としては、BOPとして現れる。だから、ポケットの深さではなくBOPを基準に考える必要があるのでした。そして、スケーリングやSRPやフラップを行う事は、すべてデブライドメントであり、歯石等が取れれば、どんな方法でもよいとのことでした。

この考え方をもとに、敬友会の診療所では、歯周病検査をきっちりと行います。そして、そのポケットの深さとBOPの有無から科学的に治療を行うようにしています。例えば、BOPがあってもポケットは2ミリなら、TBI。縁上のコントロールができていても更にBOPがあり、ポケットが4ミリなら麻酔をしてSRPと言うような明確な数値があります。根管治療の低点数の辻褄合わせに、スケーリングやSRPを行う事はありませんし、禁止をしています。なぜならば、これをすると、本当の歯周病治療ができないからです。

また、歯周病の間接的な原因としては、一次性、二次性の咬合性外傷も忘れてはならないと思っています。よって歯周病の治療と矯正治療は切っても切れない縁があるのです。ですから矯正治療もGPは一通りできる必要があると考えています。

小児歯科について

大学の小児歯科では、小児は子供のミニチュアではないと言ってながらも、乳歯に窩洞形成をして印象を採って、インレーを装着をしている時代でした。ですから、開業後も少しの期間はこの様な治療をしていました。

これを変えるきっかけになったのが、横浜市歯科医師会が開催した小児歯科2日間コースでした。鶴見大学歯学部で行われて、当時のO教授が懇切丁寧に教えてくれました。その中で後の、小児歯科治療に大きく影響を与えたのが、ラバーダムをしっかりと装着をして、乳歯の隣接面カリエスをレジンで治療する方法です。このラバーダムをしての治療は、30年以上経過した今でも、敬友会の歯科医院ではどこでも続けて行っています。なぜならば、これをしないと、隣接面カリエスを取り残して早期の2次カリエスになるからです。そして、呼気の制御の問題もあるからです。そして、乳歯冠の実習もありました。乳歯冠は3M社を使わないとならないことと、ラバーダムを装着して形成をし、乳歯冠を装着する直前に外す様なことも現在でも続けています。

よって、ラバーダムの使用は、根管治療よりも小児歯科が必須だと私たちは考えています。

そして、小児の咬合誘導に関しても、本格的な矯正治療もできますので、ずっと取り組んでいます。

マイクロによる治療について

小机歯科でマイクロを導入したのは、2007年7月です。小机歯科が現在の場所に移動する3年前でした。きっかけは、材料屋さんがデモで持ってきた事から始まります。まず、覗いてみてびっくりしました。「明るい」そして「はっきりと大きく」見える。

ただ、この時のマイクロはドイツのメーラー社製のデンタ300と言う機種でした。今でも都筑キッズデンタルにありますが、誰も使わないで放置されています。それはこの後に導入したドイツのツァイス社のマイクロが良すぎたからです。移転前の診療所はユニットが2台でしたので、片方がメーラー社製、もう片方がツァイス社製となりました。この2台を使ってみると、使い勝手が良いのが圧倒的に良いのがツァイスでいた。

そして、2010年に現在の小机歯科の場所に移転しました。ユニットが4台になってので、もう1台マイクロを買うことになりました。ただ、移転で資金を使ったので、マイクロはC国製造のものにしてしまいました。恰好はツァイスに似ていたのですが、使い勝手はよくありませんでした。これは、モラー機能というツァイスの特許機構が他社には搭載できていないのが原因だと、後に知ることになりました。

それから、小机歯科の2階に診療室を拡大し、ユニットも10台になりました。しかしマイクロまで買う資金がないので、最初はユニットだけでした。でも、マイクロで行う診療をすでに5年程度続けていると、マイクロが無いと診療ができないことに気が付きました。そこで、徐々にツァイス社製のマイクロを買い足してまいりました。

マイクロでの診療を行って15年。見えやすく精密な診療ができるのは当たり前ですが、長年悩ませ有れた首の痛みがかなり改善した事です。マイクロを導入する前までは、左ばかり向く生活でしたが、それが前を見て診療をするようになったからです。これはかなり健康に寄与したと思っています。先輩や同級生には、長年の診療姿勢により、頸椎症を発症し、手のしびれ等によりオペを受けた歯科医師が多いからです。

その後も、都筑キッズデンタルランドの開設や、くぼくら歯科の建て替え、相模原敬友会歯科の開設でユニットは増台されました。

敬友会では、ユニットにはツァイスのマイクロが設置されているのが、当たり前ですので、現在は28台のマイクロが稼働しています。(正確にはツァイス以外の2台はほぼ、非稼働です)

研修医の方は、マクロと言うと敷居が高いと思いますが、ツァイスのマイクロは前出のモラー機能があります。これは接眼レンズが常に床と平行である機構です。これにより、ポジショニングは他社のマイクロとまるで違うのです。割と簡単に慣れることができるのです。

そして、敬友会のマイクロにはビデオカメラがすべて内蔵されています。これを見せながら患者さんに説明をします。ビジュアルがありますので、説明が楽なのは言うまでもありません。また、研修医が行った治療も、後に指導医がチェックをしてアドバイスを与えることもしています。

CTについて

パントモは2010年の小机歯科移転前からデジタル化をしていました。CTに関しては移転に伴い設置をしました。それまでは、インプラントなどの治療でCTが必要な場合は、主に鶴見大学歯学部に撮影を依頼していました。ただ、当時はフィルムに焼いたCTで、自由に自分で見たい場所をスライスをする事ができませんでした。

そして、2010年に導入当時は機器も現在より高かったのです。しかし、ソフトウエアー上で任意の場所をスライスができるようになりました。

これにより、一番恩恵を受けたのが、インプラントではなく、根管治療でした。上顎の口蓋根などは、デンタルやパントモではダブって殆ど予想で読影していたのですが、それがはっきりと、根尖病変を確認することができるようになったからです。

大学病院では、抜髄の症例ではCTの撮影はいないと思います。しかし、CTを導入して12年。根管治療には必須と考えています。

敬友会の歯科医院では、ユニットのそばに、テーブルがありそこにモニターが設置してあります。そこでCTなどのレントゲンも確認をすることができるようになっています。

敬友会では5か所の診療所に6台のCTの設置があります。相模原敬友会歯科は2階と3階に設置してあります。

 

 

 

 

 

 

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